現行犯逮捕の「時間的場所的接着性」要件と「犯罪と犯人の明白性」要件の関係について

今まで時間的場所的接着性があれば犯罪と犯人の明白性が客観的に担保されるという理由で時間的場所的接着性の要件は犯罪と犯人の明白性の下位規範と考えてきました。

しかし、予備校の答案はこの2つを別個に構成要件だてしてあてはめているのですが、それが正しいのでしょうか?そして2つ分けて構成要件としてあてはめる理由はなぜなのでしょうか?

お忙しいところ、基本的な質問をして申し訳ないのですが、教えてください。

未設定さん
2015年11月22日
その他 - その他
回答希望講師:加藤喬
回答:1

ベストアンサー ファーストアンサー
加藤喬の回答

 ①犯行と犯人の明白性と、②時間的接着性は、区別して検討されるべき要件です。

 コメント欄で仰っている、①が主観的なもの、②が客観的なものという理解は、的を射ています。

 つまり、①犯行と犯人の明白性は、逮捕者が、犯行が発生し、その犯人が被逮捕者であると「認識」していること(認定資料の話はさておき)、②時間的接着性は、犯行と犯人の明白性についての逮捕者の認識とは別に、犯行と犯人の明白性について、客観的事情により担保するものです。

 例えば、逮捕者Aは、Bが犯行を実行しているところを現認したが、その後、Bが現場から逃亡し(Aによる追跡なし)、数時間後、BがAが滞留していた犯行現場に戻ってきたという事案を想定すると、
 AがBの犯行の実行を現認している以上、①は認められますが、犯行発生からBの逮捕まで時間的間隔があるため、戻ってきて逮捕されたBが、本当に、Aが犯行を実行している者として現認したBであるのかが、客観的には明白であるとは言い難いです。なので、②時間的接着性による絞り込みをかけるわけです。
 
 なお、正確には、②時間的接着性であり、時間的接着性と場所的接着性は等価的な要件ではありません。
 場所的接着性が挙げられるのは、場所的間隔があればあるほど、犯行と犯人の明白性を担保するために必要とされる場所的接着性が変わってくるという考えによるものです。
 リーガルクエストや事例演習刑事訴訟法でも、時間的接着性と場所的接着性を並列的には挙げていません。

 それから、②の趣旨については、学者ごとに理解が違います。学説の多数は、②は犯行と犯人の明白性を客観的に担保するものと位置付けてますが、リーガルクエストでは、「犯行と逮捕の接着性は、犯人人の明白さとは別に、逮捕の緊急の必要性を基礎づける要素として考慮されるものとみるべきである」と説明されています(司法試験との関係では、前者の理解でいいです)。

 最後に、細かいことですが、「犯罪」ではなく、「犯行」です。逮捕段階では、犯罪成立要件を満たしているかは不明なので、犯罪よりもアバウトな表現としての犯行という表現のほうがいいです。リーガルクエスト・事例演習刑事訴訟法でも、「犯行」という表現になっています。

2015年11月23日


未設定さん
お忙しいところ、迅速かつ丁寧な回答ありがとうございます。

2015年11月23日