こんにちは、たまっち先生です。今回は、平成30年度予備試験の民事訴訟法を題材として、実際のA答案とC答案の比較検討を通して補助参加制度について考えていきたいと思います。
前回は、複雑訴訟として、主に独立当事者参加制度、共同訴訟参加制度について扱いましたが、補助参加制度もこれらの制度と同じくらい重要な制度になっていますので、それぞれの制度にはどのような点に違いがあり、どのような場面で用いられる制度なのか、という点を考えながら読んでいただければ幸いです。
では早速、A答案とC答案を2つを見比べてみましょう。
A ポイントとC ポイントが分かり易いよう⇩表の記載方法としました(なお、デバイスやモニターの大きさで段がズレて表示される場合がございます。あらかじめご了承ください)。
B E X Aの考える合格答案までのステップとの関連では、「5.基本的な事例問題が書ける」、「6.条文・判例の趣旨から考える」との関連が強いです。
平成30年予備試験民事訴訟法の問題は、問われていることは非常にシンプルで、難しい論証を書かなければならないわけでもありません。もっとも、論証のフレーズを覚えているだけでは、例えば、参加的効力の意味は覚えていたとしても、その本質を理解していないと適切な当てはめをすることはできないでしょう。そういった意味では、条文の趣旨を踏まえて、YとZ社の関係性を意識しながら、解答を作成しなければならなかった問題であるといえると思います。
なお、今回は補助参加制度を中心に扱っていますが、独立当事者参加、共同訴訟参加、共同訴訟的補助参加など、似て非なる制度が多く存在しますから、この際に、各制度の横のつながりについてもご確認いただくと良いと思います。
平成30年度予備試験 民事訴訟法の問題を読みたい方は、⇩⇩をクリック
https://www.moj.go.jp/content/001263947.pdf
補助参加は、他人間の訴訟の係属中に、その結果について利害関係を有する第三者が、当事者の一方を勝訴させ自己の利益を確保するために、訴訟に関してこれを助そして訴訟を追行する形態をいいます。
補助参加制度の趣旨は、補助参加人の権利を保障することにあります。訴訟結果は、原則として当事者間においてのみその効力を生じますが、当事者以外の第三者であっても、当該訴訟の帰趨によって影響受ける場合があります。そのような場合に、当該第三者にも権利を保障する機会を設ける必要があります。そこで認められたのが補助参加という制度になります。
⑴ 訴訟参加
訴訟参加とは、すでに係属している他人間の訴訟に加入して、その訴訟手続に関与し、自己の名において訴訟行為を行うことをいいます。訴訟参加には、独立当事者参加、共同訴訟参加、補助参加制度の3つが存在します。訴訟参加を行うメリットとしては、当該訴訟手続に参加することで自らの利益を擁護・保全する機会を与えられるとともに、同手続の中で一挙に統一的・全面的な解決を図ることができるという点が挙げられます。また、参加される訴訟当事者側のメリットとして、関連する紛争が全面的に解決できる点が挙げられます。
⑵ 独立当事者参加
独立当事者参加とは、他人間の訴訟の係属中に、独立の当事者として参加加入する形態をいいます。参加人が当事者の地位を取得できる点で補助参加とは異なり、また、参加人が従来の当事者のいずれとも共同訴訟関係に立たず、独立の訴訟上の地位を有する点で共同訴訟参加とは区別されます。
⑶ 共同訴訟参加
共同訴訟参加とは、他人間の訴訟の係属中に、第三者が原告又は被告の共同訴訟人として参加する場合で、その結果として、必要的共同訴訟として民訴法40条の規律を受ける参加形態をいいます。当事者として参加する点では独立当事者参加と同様ですが、従来の当事者のいずれかの立場に立たなければならない点が独立当事者と大きく異なる点です。
⑷ 補助参加
補助参加は、上記の通り、他人間の訴訟の係属中に、その結果について利害関係を有する第三者が、当事者の一方を勝訴させ自己の利益を確保するために、訴訟に関してこれを助そして訴訟を追行する形態をいいます。参加する第三者は当事者として参加するというわけではなく、あくまで補助参加人という当事者とは異なる立場で参加する点が上記の共同訴訟参加や独立当事者参加とは大きく異なる点といえます。
①「訴訟の結果」について「利害関係を有する」こと(補助参加の利益)
②他人間に訴訟が継続しているか又は訴訟係属が復活し得ること
②の要件については、説明不要だと思いますので、以下①の要件について説明します。
ア 「訴訟の結果」の意義
現在の多数説ないし通説的見解は、訴訟物たる権利又は法律関係の存否だけではなく、判決理由中の判断も訴訟の結果に含まれると解しています(訴訟物非限定説)。なお、少数説として、訴訟の結果を訴訟物に限定するという説もあります(訴訟物限定説)。
判例がいずれの立場をとっているかは、明らかではありませんが、受験生としては、訴訟物非限定説から論じるのが無難です。
イ 「利害関係の意義」
「利害関係」とは、法律上の利害関係を意味し、単なる事実上の利害関係を有するだけでは足りないとするのが判例です(最判昭和39年1月23日民集71・271、最決平成13年1月30日判タ1054・106)。
また、「法律上の利害関係」を有する場合とは、当該訴訟の判決が補助参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうとするのが判例です(前掲最決平成13年1月30日)。
ウ 本問における検討
本件の訴訟の結果は、本件売買契約の買主がZであるという理由による本件売買契約の不存在です。そして、YがXに対し本件絵画の代金として100万円を支払ったことから、売買契約が成立していることは認められる。それは、Yが支払ったことから、売買契約が成立していることは認められる。そうすると、あとはYが個人的に支払ったのか、Z社の代表として支払ったのかいずれの二者択一であるから、買主がZであるという認定は、X Z間の売買契約が成立したと認められ、前訴の判決が参加人の法的地位に影響する恐れがあるといえる。したがって、Z社は、X Y間の「訴訟の結果」について「利害関係を有する」といえる。
このことから、少なくともZ社は補助参加の利益を有する者にあたるといえます。
⑴ 参加的効力とは
民訴法46条は、補助参加にかかる訴訟の裁判については、補助参加人に対してもその「効力」を有することを規定しています。
かかる「効力」の意義については、見解の対立があるものの、既判力というワードではなくあえて「効力」と規定していることから、既判力とは別個の参加的効力を規定したものであると考えられています。
⑵ 参加的効力の客観的範囲
参加的効力の生じる客観的範囲としては、
「判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶ」と解されています(最判昭和45年10月22日)。さらに、その後の判例では、「判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断をいうものであって、これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではない」と説明されています(最判平成14年1月22日)。
したがって、参加的効力が生じる客観的範囲は、①判決主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否と、②判決理由中の判断のうち、判決主文を導き出すために必要な主要事実にかかる認定・法律判断等であるということができます。
本件では、前訴で買主がZであって、X Y間の売買契約は成立していないと判断されています。しかしながら、買主がZであるという判断は理由中判断であるところ、XのYに対する請求を棄却するために不可欠ではありません。そのため、Yが買主ではないという判決主文を導くために必要不可欠な判断とはいえないため、②に当たらず、買主がZであるという前訴の判断に参加的効力は生じるとはいえません。
⑶ 参加的効力の主観的範囲
参加的効力を規定した民訴法46条の趣旨は、補助参加人が被参加人を勝訴させることに よって自己の利益を守るため訴訟追行したにもかかわらず、被参加人が敗訴した場合には、衡平の観点から敗訴結果を分担させるべきである点にあります。
したがって、訴訟告知により参加的効力が生じるのは、告知者と被告知者との間に告知者の敗訴を直接の原因として求償又は賠償関係が成立する実体関係があり、参加することについて期待可能性が認められる場合に限定されると解すべきです。具体的には、共同して訴訟追行することが期待される場合を指します。
本件では、前訴であるX Y間の訴訟においてXがZ社に対して訴訟告知をしたところ、Zはこれに参加することなく、Xの請求は棄却されています。これについて、Zには補助参加できなかった理由は特に認められないことから、53条4項によりXのZに対する後訴において参加的効力が生じるとも思えます。
もっとも、上記のとおり、そもそも買主がZであるという判断は主文を導くために必要不可欠な判断ではないため、参加的効力は生じません。
また、仮に参加的効力の客観的範囲が及ぶとしても、以下の理由からZに対し参加的効力が及ぶかは検討の余地があります。
具体的には、たしかにZ社としては本件売買契約の買主がYであると主張する点でXとは利害関係を共通にし、共同して訴訟追行する関係にあると思えますが、よくよく考えてみるとZ社の代表取締役はYですから、前訴の原告の補助参加人たるZ社を代表するのは「Y」であり、前訴の被告も「Y」であることになります。そうすると、本問のような特殊事情を加味して考えると、参加人と非参加人は訴訟を共同して行う関係にあるとは言い難く、参加的効力の主観的範囲についても否定されることになるでしょう。
5 訴訟告知
訴訟告知とは、訴訟が係属している事実を第三者に対して通知する当事者の行為であり、第三者は、訴訟告知を受けて自己の利益を擁護うるため当該訴訟に補助参加することができます。第三者が当該訴訟に補助参加した際には、補助参加にかかる訴訟の裁判は、補助参加人に対しても効力が及びます(46条)。なお、53条4項は、補助参加することができる第三者が訴訟告知を受けて参加しなかった場合においても、民訴法46条の規定の適用については、参加することができたときに参加したものとみなすとしており、適法な訴訟告知を受けながら訴訟告知しなかった第三者に対しても参加したのと同様の参加的効力が及ぶとしています。
本問はまさにZ社が訴訟告知を受けたのに、訴訟に参加しなかった場合ですから、答案作成にあたっては、46条及び53条4項に言及する必要があります。
添削をしていると、訴訟告知の規定を指摘していない答案が散見されましたので、関係する条文は簡潔でも構いませんから、必ず言及する癖をつけておきましょう。
いつもBEXA記事「たまっち先生の論文試験の合格答案レクチャー」をお読みくださり、誠にありがとうございます。
第30回は令和30年予備試験 民事訴訟法から「補助参加」合格答案のこつ について解説いたしました。次回以降も、たまっち先生がどのような点に気をつけて答案を書けば合格答案を書くことができるようになるかについて連載してまいります。ご期待ください。
A答案を書くのに必要なのは「短答の知識を論文に活かせるようにすること」
2023年4月16日 たまっち先生
役に立った:2