・人権処理パターンや三段階審査論を押さえたのに書けない
・判例は知ってるのに答案でどう使えばいいのかわからない
・権利の保障の話をしているのか制約の話をしているのかわからなくなる
こんな悩みありませんか?
「憲法の答案をどのように書けばいいのか」これは受験生にとって越えなければならないハードルであり、大きな悩みといえます。
このような受験生の悩みを解決してくれる糸口が、人権処理パターンや三段階審査論といったものですが、これらを覚えたからといって、実は憲法の答案が書けるようになるわけではないのです。
憲法を理解するためには、人権処理パターンや三段階審査論と併せて判例や学説も理解できるようにならなければなりません。
合格者の頭の使い方は、ゴールを決めてからゴールに向けてどうロジックを展開するか、答えに向かって進んでいってるイメージです。
「この事例でこの武器が使えるかな?」といった発想が大事です。
道具の種類を知っているだけでなく、道具の使い方がわかるようにならないといけません。
基本的な道具を知るだけではなくて、この道具はこう使うというのを徹底的に叩き込む必要があるのです。
憲法に苦手意識を持つ人が多いのは、道具の数がもともと少ないためです。
他の科目に比べると少ない道具でカバーする範囲が広く、どこまで使えるかがわかりにくく、条文がないから手がかりがなく、知識がなかったらアウトです。
「これはどういうことなんだろうか?」ということを考える、判例はグループ(流れ)でとらえる、そういった法的思考プロセスを身につけることが大事です。
A市議会議員のXは、A市議会の文教委員会において、「A市議会議員Dは、市教委の教科書採択に関し、特定の教科書を採択させるため、市教委の委員に不当に圧力を掛けた。」との発言(以下「本件発言」という。)をした。しかし、その後、Dが教科書採択の過程で市教委の委員に圧力を掛けたという疑いが誤りであったことが判明した。 そのため、A市議会は、所定の手続を経た上で、本会議において、Xに対し、「私は、Dについて、事実に反する発言を行い、もってDを侮辱しました。ここに深く陳謝いたします。」との内容の陳謝文を公開の議場において朗読させる陳謝の懲罰(地方自治法第135条第1項第2号参照)を科すことを決定し、議長がその懲罰の宣告をした。 この処分の憲法上の問題点について論ぜよ。 |
この問題は、平成30年予備試験論文憲法の一部を要約したものです。
この問題が憲法19条の思想・良心の自由の問題になるということは、少し勉強した方ならわかるでしょう。
しかし、なぜ侵害されているのか、侵害がそもそもあるのか、これを論じれる方は少ないのではないでしょうか。
また、さらに勉強のすすんでいる方は、謝罪広告事件(最判昭和35年10月19日・民集第10巻7号785頁)や、君が代起立斉唱拒否事件(最判平成23年5月30日・民集第65巻4号1780頁)の判決を思いつくかもしれません。
しかし、これらの判例をどのように答案に書けばいいのかはわからないのではないでしょうか。
その原因は、基礎知識や判例の背後にある憲法の幹や枝葉となる考え方が、身に付いていないからです。
人権処理パターンや三段階審査論が無意味というわけではありません。
自分が今なんの議論をしているのか、その指針のためにはこれらのフレームワークは必要です。
ただ、これらは憲法答案を書くための総論にあたるものであり、いわば木の幹にあたるものになのです。幹だけ押さえていても答案を書くことはできません。判例・学説という枝や葉を理解し、それらを幹と結びつける学習が重要になってきます。
前述の平成30年予備試験論文憲法の要約問題では、Xに陳謝文の朗読を求めることがXの思想・良心の自由を侵害するのではないかという点が論点になります。
・保障範囲
まずXの思想・良心の自由が保障されているのか否かを検討することになります。
参考にすべき判例は、謝罪広告事件です。
謝罪広告事件は、"謝罪広告をすることが思想・良心の自由に反するか"これが主要な論点になりました(判旨はご自身でご確認ください)。
学説によると、思想良心の自由の保障範囲は3つあります。
①特定の思想の禁止もしくは強制をしてはならないこと
②思想告白の強制・調査をしてはならないこと
③特定の思想にもとづく差別的扱いをしてはならないこと
本問題では、謝罪広告事件と同様に、謝罪を強制することが①思想の強制にあたるのかがまず問題として設定できます。
「思想・良心」とは何かという点について、謝罪広告事件と関連して学説上内心説と信条説があります。
内心説は「思想・良心」を広くとらえ、人の内面的態様それ自体(要は人の心の中にある考え全般)を保障対象とする考えです。
他方で信条説は「思想・良心」を限定的とらえ、信仰に対する世界観・人生観を保障対象とする考えです。
内心説に立てば、Xが陳謝文の朗読に対して反対意思を形成することも憲法19条の保障範囲に含まれることになります。
信条説に立てば、Xの反対意思が信仰に対する世界観・人生観に含まれない限りは憲法19条の保障範囲には含まれないことになります。
・制約
仮に憲法19条の保障範囲に含まれるとして、制約についてはどうでしょうか。
参考にすべき判例は君が代起立斉唱拒否事件です。
君が代起立斉唱拒否事件は、国家斉唱の際に起立斉唱を命令することは、君が代の背景にある思想を強制していると捉えれば①特定の思想を強制していることになり、あるいは君が代以外の思想を禁止していると捉えても①特定の思想の禁止をしていると考えることができます。
また、起立斉唱しているか否かを確認していることを通じて、②君が代の思想に賛同している人か否かを調査しているともいえます。さらに、③特定の思想にもとづく差別的扱いをしているととらえることも可能です。
現に君が代起立斉唱事件での原告は①~③すべてを主張しているのです。
しかし、最高裁は原告の①~③の主張を、起立斉唱は社会的儀礼であり、君が代思想に対するメッセージ性というものは希薄であって、社会的に①~③の意義はないとして、すべて認めませんでした。
もっとも、①に関しては、起立斉唱を命令することは思想と不可分に結びつくという点は①にあたると一般論を示しています。ただし、今回は不可分でなく間接的な制約であると判断しています。
本問題においても、陳謝文の朗読を求める行為が、①思想の強制、②思想の調査、③思想による不利益扱いという君が代起立斉唱事件と同様の主張を構成することができます。
あなたの見解では、①~③のうち①を肯定しつつも間接的な制約であるという反論をたて、事実をあてはめていくという答案を作ることが可能です。
このように保障範囲では謝罪広告事件を、制約では君が代起立斉唱事件を学説も合わせて理解しておけば各段階での検討の組立をすることが可能なのです。
Xの主張 | 反論 | |
保障範囲 (謝罪広告事件) |
内心説 ⇒Xの権利含む |
信条説 ⇒Xの権利含まない |
制約 (君が代起立斉唱事件) |
①思想の(直接)強制だ | 強制じゃない |
強制を含んでも間接的な制約だ | ||
②思想の調査だ | 思想の調査じゃない | |
③思想による不利益扱いだ | 不利益扱いじゃない |
以上のような検討は、残念ながら判例をただ読んだだけではわからないのです。
しかし、伊藤たける先生の「憲法の流儀」は、これら判例・学説を関連させることを意識し、幹から枝葉までを完成させることが可能な講義です。
基礎編では、判例の解説をしつつ学説を関連付け、主張・検討の際のポイントになる視点を提供しています。
実践編では、基礎編で解説した視点を実際にどう使うのかを解説しています(※残念ながら現在実践編では司法試験本試験の平成18年~平成26年までの解説のみとなっており、予備試験平成30年の解説はありません)。
憲法に限らず、ただ判例を読み上げるだけでは記憶の定着も難しいでしょう。理解しながら判例を読み進めること、学説と関連させたり、各判例の位置づけを意識しながら判例を学習することで、記憶の定着だけでなく答案でどのように使うかを意識する訓練が可能になるのです。これが、幹から枝葉まですべてを意識した学習の重要さなのです。
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司法試験・予備試験に対策において、法律初学者やいくら受けても合格できない方は法律をどのように学習すればよいかわからないという悩みがあることでしょう。そのため、ただ無闇に判例を読むだけの学習をしてしまっている方は多いのではないでしょうか。
判例を羅列して1つ1つ読み進めるだけの学習法では、上記のような真の判例学習というものは難しいです。
求められるのは量ではなく、幹と枝葉を意識した学習なのです。幹と枝葉を意識した学習さえできれば、出題範囲を網羅していなくとも合格点を獲ることは可能です。判例と学説の関係、各判例の横のつながり、その判例で注目すべきポイント、答案で書く際の議論のレベルなど、常に幹と枝葉を意識する学習が真に効率のよい学習であり、なおかつ楽しくなる法律学習なのです。
そして、この幹と枝葉の関係を重点的に解説することに重きを置いているのが吉野勲先生の「司法試験道場」なのです。
司法試験道場は、従来ただ羅列されるだけだった判例学習を横のつながりや学説との関係、そして判例をどのように答案に落とし込むのかということを身に付ける目的の講座です。テキストもそれに特化して制作されています。
テキストで重要視している点について
(説明会より抜粋)
真の判例学習をその手で、是非実感してください!
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