近年予備試験では、短期合格者が多く紹介されており、それを目にした方も多いと思います。
予備校の中にも「最短コース」「1年合格コース」と呼ばれるプランが用意され、最短で合格するカリキュラムが組まれたりし、多くの受験生が最短での予備試験合格に挑んでいます。
たしかに、最短で予備試験に合格することは理想です。
早期に合格できればその分法曹として専門性を上げる時間に割くことができますし、次のステップにスムーズに移行できるのであこがれるのは当然でしょう。
その一方で現実は、予備試験の合格者データからは以下の通りになっています。
少し古いデータになりますが、予備試験合格者のおおよそ半数は2回受験で合格していますし、3回目・4回目での合格者と合わせれば約75%が複数回受験をしています。
○参考:第69期を対象とした司法試験予備試験に関するアンケート調査結果
当然ながら皆さんには大学、仕事、プライベートなど受験勉強以外の生活があります。また、試験対策経験の有無や考え方の千差万別でしょう。そういった環境や考え方との相性により、最短コースに向いている人とそうでない人は分かれます。
○最短コースに向いている人の条件
第1に、可処分時間が確保できる人でしょう。
最短コースといっても、必要最低限の学習は必要になってきますが、司法試験・予備試験ではその必要最低限の学習時間が膨大になります。
実際、各種予備校のいわゆる「最短合格コース」では少なく見積もっても500~700時間の学習時間が講義時間として提示されています。これに加えて自学自習の時間を獲らなければならないため、最短で合格するためには短期間で可処分時間を多く確保できる必要があるでしょう。
第2に、予備試験の勉強法が確立されている人であることも重要です。
予備試験をはじめて受ける、今まで勉強したことがないという人であれば、おそらく知識を覚えることにまずは集中するでしょう。
しかし、司法試験・予備試験の天王山と言われている2次試験の論文試験は、知識を覚えていることだけでは足りず知識を使うということが重要になってきます。そして、知識を使うためには演習メインの学習をする必要がありますが、「覚える」から「演習」にシフトすることは人によっては非常に難しく時間がかかります。
実は1次試験の短答試験も同様で、覚えた知識で問題を解けるようになるためには、過去問演習が必要になりますが、これも人によっては「覚える」から「演習」にシフトすることが難しく時間がかかる場合があります。
「いつかは演習をやる」ではなく、学習初期段階から演習の重要性を理解した勉強をしている人が最短コースには向いているといえるでしょう。
第3に、"とりあえずやってみよう"という失敗を恐れない人であることも重要です。
前述の通り、予備試験の勉強は量も多い上に、質も重要になってきます。ただ講座を消化するだけだと成果が見えづらい上に、本当に自分の勉強法が正しいのかわからない状態に陥りがちです。
そのため、失敗してもいいから"とりあえずやってみる"という方が向いているといえるでしょう。
最短コースで走り抜ける人は限られている
さらにいえば、これらの条件が整い最短コースを獲ったからといって、必ずしも最短コースで走り抜けられるとは限りません。
多くの最短コースを獲った人たちも、この勉強方法が自分に合っていないということに気づきシフトすることがあります。
たとえば、予備試験受験ではなくロースクールコースにシフトする人もいれば、基本書で学び直す人もいます。
このように、一般化された最短コースは必ずしもあなたにとって最適なコースであるとは限らず、走り抜けられるとは限らないのです。
試験対策を始める際に必ず検討しなければならないのは、学習コースが最短か否かという視点ではなく、あなたにとって最適なコースか否かという視点です。
そして、"コース"というのは予備校から提供されるものに固執する必要はなく、あなたの環境(生活リズム、仕事やバイト、可処分時間)や基礎体力(学習経験の有無やどれだけ類似試験の勉強経験など)を考慮した期限・目標をベースに考えることをおすすめします。
たとえば、あなたは1年間でどの程度学習ができるのか、そしてその学習到達は全体の合格プランからするとどの程度まで到達できるのか、などを中心に考えるべきです。
来年の受験までに憲法・民法・刑法の上三科目だけ短答試験で合格点を目指すでしたり、もう少し分量を増やして民事訴訟法・刑事訴訟法のいずれかの短答試験でも合格点を目指すという、あなたベースの最適学習コースを目標立てる必要があるのです。そして立てた目標からドンドン小さな目標を設定していき、その目標を達成するという小さな成功体験を積み上げることで自分自身の勉強法や学習リズムを確固たるものにしていくことが重要です。
予備試験はご存知の通り狭き門です。むしろ落ちて当たり前の試験であり、合格できないことを恥ずかしいと感じる必要はありません。現に予備試験合格者でさえ、約4人に3人が複数回受けて合格しているのですから、まずは次の予備試験までの学習目標→小さな目標・小さな成功体験を積み上げるあなただけの最適コースを作り上げることからはじめましょう!
次の予備試験までの学習目標を立て、それをさらに小さな目標に分割・設定するときに注意しなければならない点があります。
それは「小さな目標を等分にするのではなく、最初は最小の目標にし、そこから拡大させていく」ということです。
たとえば、設定した目標を100とします。
これを10個に等分すると10ずつの目標が出来上がります。しかしこれでは最初の10の目標で挫折する可能性があります。
そうではなく、最初の目標は1でいいのです。最小である1の目標を設定し、次の目標は2にしましょう。あなたは成功体験を積み上げていき成長するのでさらに次は拡大した目標を立てていきましょう。
するとどうでしょう。4、8、16、32…というように気付けば1しか達成できていない期間で64の目標を達成できるようになります。
自分が成長することを見越して、最初は最小の目標を立てそれを拡大していき、実現可能な目標を立てていくポイントになります。
とはいえ、何か参考になる指標があることが必要でしょう。
そこでBEXAでは、可処分時間が少ない実現可能な中間目標として、半年で民法の知識を完成させようというスローガンを掲げ、現在予備試験合格を目指す方を対象として、民法の知識・演習のベースを完成させるキャンペーンを実施しております。
9月26日~9月30日の間に吉野勲『司法試験道場』を以下のクーポンでご購入くださった方には、吉野先生の別講座『民法条文マーキング講義 極』をプレゼントいたします。
吉野先生の条文マーキング『民法条文マーキング講義 極』は、民法の条文をベースに各条文の文言を丁寧に解説する講義で、短答1位合格者をして"秀逸"と言わしめた講義です。
民法は短答・論文ともに条文知識が重要になり、条文だけに特化して学習することが非常に有益な上、短答の知識が論文の土台になる科目ですので、令和5年以降の予備試験合格を見据えれば土台を作る段階といえます。
○実現可能なゴールの一例/あくまで一例です。あなたの環境に適したプランを検討してみてください。
※民法は民法総則・物権・債権総論・債権各論・親族相続と大きく5分野に分かれます(テキストによっては6、7分野に分けているものもあります)
2021年9月24日 吉野勲
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