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民法は悩みを見せれば点が入る!悩みを見せる民法フレームワーク論

2020年7月18日   葵千秋 

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  1. 悩みを見せれば民法では点が入る!
    講師が実践してた"ちょっとズルい"民法フレームワーク論

プロフィール

 葵千秋
・2019年都内有名ロースクール卒業
・2019年度司法試験合格

受験生時代は民事系科目の中でも民法を得意としており、ロースクールの教授より教授の打診を受けるほど民法に精通している。
その一方で、学問としての民法と、試験対策としての民法は別物と割り切っており、後者の方法論を探求し令和元年司法試験に合格。

  1. 民法の一般フレームワークは要件事実
    悩みを見せるのは要件事実の埒外の問題

 :葵先生、本日はよろしくお願いします。

:よろしくお願いします。

:本日のテーマは民法の答案の書き方の中でも、根幹的なフレームワーク論というテーマなのですが、一般的に民法は、刑法などの刑事系科目と比べて、答案の形が固定されていない印象があるのですがいかがでしょうか。

:そうですね。刑法は構成要件→違法性→責任と答案の型が決まっている印象です。"答案を作成する"という視点のみで見れば、刑法の試験問題は「甲の罪責の述べよ。」といった罪責を問う問題がほとんどなので、(近年の学説系の問題は置いておいて)まず構成要件該当性を検討し、その中で問題になりそうな構成要件を厚く論じたり、次に違法性で問題になるなら違法性を厚く論じたりと、答案を書く順番が明確に決まっていると思います。
 配点なのですが、刑法はあてはめに配点が大きく振られている印象が強いです。加えて、個人的に刑法は未知の問題・考えさせる問題というのは出題されづらく、どちらかというと書き切れるかどうかで点数が変わるような印象を受けています。そういった力技で合否が付けられるのを危惧した司法試験委員会が、考えさせる問題として学説問題というものを取り入れてきたのではないかと考えてます。

 :いきなり脇道にそれましたが、刑法は答案全般にわたる書き方の型(=フレームワーク)が確立しており、そのフレームワークから大外ししづらいため、答案の形が固定されているという印象を多くの受験生が持っていると考えられます。
この答案の形という意味では、葵先生はどのようにお考えでしょうか?民法に答案の形というものは一般的にあるのでしょうか?

:民法には、いわゆる要件事実論というものがあります。
 この要件事実の思考で考え、答案も要件事実の形で作成するという受験生が多いように感じます。現に私も要件事実を民法の答案の形として用いていました。
 要件事実論をここでは、民法の一般フレームワークとして位置づけます。

:なるほど、民法=要件事実で書くことで答案が読みやすくなるだけでなく、一般フレームワークとして答案の形に落とし込んで利用するということですね。

:はい。ここまでは、多くの受験生が理解していることだと思います。
「○○の請求は認められるか」などの設問があり、それに対して通常の要件事実で言い分を考え、条文→要件(→場合によっては判例)の順であてはめていけば点数が入ると思います。
たとえば、超典型例でいえば不法行為に基づく損害賠償請求の「過失」の認定などでしょうね。

これができているかどうかが、「民法の基本ができているか否か」の中心になると思います。

今回お話したいのは、こういった要件事実論というわけではなく、民法特有の未知の問題で、一般フレームワークを用いると不都合が生じるような場合、フレームワークの埒外にあるような問題が出題されたときの対応方法について、お話したいのです。

 :お願いします。

:まず、注目すべきなのが、特に司法試験で「なんじゃこりゃ」という問題が出題された場合の、その問題の配点を考えます。

:配点ですか?

:そうです。

 そのような場合、どうしても結論ありきでそのままあてはめてしまったり、わからないから淡泊に書いてしまって、中々点数が伸びないケースが結構多いのではないかと思います。
 しかし、そこで試験委員がそのような問題を出題した意図を冷静に考えてほしいんですよ。要は既存知識だけでは解けないような問題を出して「さぁ、どう考えます?」と試されているわけじゃないですか。

 つまり、そこに正解はなくて、「私はこういう思考をしました」ということを表現すれば、結論はどちらでもいいんです。私は、こういった点を"悩みを見せる"と呼んでいますが、"悩みを見せる"だけでその問題は大きく点数をゲットすることができます。"悩み"の正当性なんてどっちでもいいんです。"悩みを見せた"か否かだけが重要で、その"悩み"の思考過程に点数が振られてるわけですから。

 多くの合格者もこの"悩みを見せて"合格していったのだと思います。重要なことは、民法の未知の問題は逃げずに"悩みを見せる"努力をすれば点数が入る、ということなんです。

:それが今回葵さんがお話されたい、一般フレームワークの埒外で悩みを見せる方法論というわけなんですね。

:そのとおりです。

  1. ①通常の条文・要件をあてはめると
    どうしても不適当な結論にケース

:では、前置きが長くなりましたが、その一般フレームワークの埒外のケースについて、その対処方法などを教えてください。

まず、未知の問題ってどういったケースが考えられるでしょうか。私は次の3類型に区別していました。

①通常の条文・要件をあてはめるとどうしても不適当な結論になるケース

②判例の規範だけだとおかしな結論になるケース

③問われた問題の趣旨や規範すらわからないケース

この3つです。

 

①は抽象論・規範レベルで悩みを見せる方法論、②③は具体論・あてはめレベルで悩みを見せる方法論になります。

:まずは①条文・要件のあてはめだと不適当な結論になるケースについてです。

:はい。
このケースは論点となった条文や要件だけでなくその趣旨もわかっている。しかし、そのままあてはめると不適当・不合理な結論になってしまうようなケースです。

このようなケースの出題意図は、不適当な結論に対してどのようにして悩みを見せるのか、反論を作り出す悩みを見せることに点数が振られている可能性が高いです。
結論はどちらでもよく、「反論を考えて結論を逆転させる」でも「反論を考えたがどうしても結論は変わらない」、どちらでもいいんです。重要なことは「考えましたよ」というアピールが必要になるんです。

:どのように「考えました」とアピールするのですか?

:まず不適当な結論を生の事実で抽出します。それと同時に条文の趣旨も並べます。
抽出した生の事実は並べた条文の趣旨とは抽象度が違いますから、なるべく条文の趣旨と同レベルにまで抽象化してみるんです。

たとえば、司法試験平成25年民法設問1後段がこの方法で対処可能です。該当の問題の思考をファイルにまとめたので見てみてください。

平成25年民法 設問1後段

  1. ②判例の規範だけだと
    おかしな結論になるケース

:次に、②判例の規範だけだとおかしな結論になるケースです。

:はい。これはいわゆる「判例の射程」に関する問題です。判例の射程論というのは、要は判例を適用するか否かの線引きの問題だと私は考えています。

 ここでの対処法は2段階あって、(1)判例の射程論にあえて敷き替えない、(2)あてはめで判例と事案の違いを比較して適否を決める、に分かれます。

(1)判例の射程論にあえて敷き替えない
 理想は、まず判例の規範⇒この判例はこういったケースを前提にしている(射程)⇒射程の範囲内であれば判例の規範あてはめ、範囲外であれば判例が妥当しない、といった流れで答案を書き、その中で判例の理解を示す、というものだと思います。

 ただ、現実問題として「この判例はこういったケースを前提にしている」という射程部分、およそ知らない判例が出た場合に書くことなんて無理難題なんですよ。

 仮に知っている有名な判例だとしても、射程論というあまり書いたことのない答案を作り上げることは結構厳しいです。先ほどの①のケース(出題された事案の事実を抽象化するケース)と違って、判例の事案を規範レベルに抽象化するのってあまりやったことがないんですよ。

 緊張状態、何も調査できない状況、迫ってくる時間の中で、これを書ける人は天才だと思いますよ。いやほんと。

:じゃあどうすればいいんですか?

某有名な憲法の先生がおっしゃってたのですが、憲法って結構判例の射程の話になるじゃないですか?事案を読んで、「あ、この事案の題材は○○事件だ」みたいな。
 そこで頑張る人は判例の理解を示すために必死に判例の射程を答案に書くんですが、あまり書いたことがないから答案でボロが出る危険性があるんです。点数が取れる可能性はありますが代わりに全然理解できてないというレッテルを貼られる危険性もあるハイリスク・ハイリターンな手法なんですね。

 で、その先生がおっしゃるには、「あえて触れない」「一般の憲法の判断枠組みにもっていって穏当な答案を作る」という方法でも点数が入る、とおっしゃってたんですね。

 この憲法の発想を一部借用して、民法でも利用できると思います。

:借用ですか?

:はい。射程論という規範レベルで検討・訓練をあまりしていないものを書かなけばならず、判例の理解が不十分だと試験委員に「理解してないな?」と勘違いされてしまうことがあります。
 であれば、規範レベルでは知ってる論証+「特段の事情」という規範だけ立てて、あえて規範レベルでは判例の射程の話は出さないという方法をとるんです。

:そうすると、今回のテーマの「悩みを見せるフレームワーク」から離れていきませんか?

:実は離れていないのです。規範がわからない以上、どこで勝負するのかの問題で、この方法はあてはめレベルで勝負をするということです。

(2)あてはめで判例と事案の違いを比較して適否を決める
 まず、判例の規範はわからないですよね。その一方で問題となる論点の論証はわかるという状況であれば(論証すらわからないのであれば、後述の③のケースになります)、論証をまず書く、その上で「特段の事情がない限り」などといったように、あえて例外要件を作り上げるのです。

 そして、「特段の事情」のあてはめで判例の理解を示すという手法をとるんです。「[論証]は○○で、特段の事情が認められる場合には(orない限りは)××が認められる(認められない)」というようにしてしまうのです。

 そして、あてはめの段階で判例の事実と事例の事実を比較して、「特段の事情」があるかどうかの比較を行えば、あてはめの中が判例の分析を示すことができるんです。あてはめが得意な人はこのあてはめを厚く書く(=悩みを見せる)だけで点数が取れると思います。平成26年民法の設問2(2)がこれに該当すると思います。これもファイルにまとめたので、参考にしてみてください。

平成26年民法 設問2(2)

  1. 問われた問題の趣旨や規範
    すらわからないケース

:最後に③問われた問題の趣旨や規範すらわからないケースについてです。

:はい。これは司法試験ではたまにこういった「いや知らんし」という条文の問題が出題されます。条文の存在は知っているけれども、趣旨や規範は考えたことがなかったというような問題です。

こういった問題には、民事訴訟法の発想が役に立つと思っています。

:今度は民事訴訟法ですか。

:はい。比較衡量の発想です。
たとえば、受験生ならご存じの「未成年者保護と取引した者の保護」でしたり、即時取得の指図による占有移転の占有開始「原所有者と取得者の利益をはかる」という対立当事者の利益を比較する視点です。

まず、登場人物の中で対立している2人~3人をあぶりだします。これは結構簡単にできると思います。
次に、その人たちってどんな人なのか、法律用語に敷き替えます(未成年、取引した者・相手方、原所有者、取得者etc)。そして、その対立している当事者間の利益をはかるとう趣旨を作り上げるんです。ここでもう抽象論はおしまいです。この比較するという趣旨を規範に置き換えてしまうのです。

:そんなことして大丈夫なんですか?

:誤解を恐れず申し上げれば、民法が苦手な人って、無意識に型にはめたがるんですよね。だから、趣旨⇒規範を導くという思考になりがちですが、民法って意外と自由度が高い科目なんですよ。しかも、誰も知らない問題、司法試験レベルの問題で、答えなんてないんですから趣旨を考えた=悩みを見せた、後はこの趣旨と事実を照らしてどっちを保護するか決める、という思考が大事なんです。

:なるほど、②のケースも同じですね。「判例の射程」の問題を規範レベルでやらなければならない、という決まりはないから、あてはめレベルで比較する、という発想と同じなんですね。

:そうですね。
 話を戻すと、趣旨を作り出したら、その趣旨に沿ってあてはめてしまう。これであてはめの段階で各当事者の事情を比較して、どっちを保護するべきかの結論を出す、ということが可能になります。

 おっしゃる通り、これは②のケースと似ていて(②との違いは論証や趣旨を知っているか否か)、①のように生の事実を抽象化できない人が未知の問題に対峙したときに、どのように対処するのかのテクニックの引き出しとして持っておくと、いざ未知の問題が出てきたとしても対処することができます。
 もちろん結論はどちらでもいいです。

 ③のケースの典型例は司法試験平成28年民法の設2(3)があてはまると思います。これもファイルを添付しておきます。

平成28年民法 設問2(3)

:最後に葵先生から、民法の答案で悩んでいる受験生に一言アドバイスをお願いします。

:民法は確かに基本が大事です。要件事実論で答案の形を意識するというのは、大前提として必要だと思います。

 司法試験は相対評価ですから、みんなが書くこと、書けることをクリアするということを土台にする必要があります。ただ、未知の問題は、あなたの法的センス、問題対応能力、論理的表現能力を問いています。要件事実にこだわり過ぎていると、一昔前の論点主義みたいにただ形だけ守っている中身のない答案になる危険性があります。

 民法は思っている以上に自由度が高い科目です。通常の基本論点の問題じゃないなと感じたら、一度要件事実は忘れて、どうすれば"悩みを見せられるのか"を考えてください。そこに点数が振られています。何度も申し上げますが、そういった問題の場合結論はどっちでもいいんです。

 民法のセンスを磨くことを忘れないようにしてください。その素材として司法試験の過去問は格好の素材だと思います。同じ問題でも、今回私がお話した方法でない枠組みもあるでしょう。何度も同じ問題を解く意義の1つはここにもあると思います。

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