予備試験短答式試験は、予備試験合格を目指す受験生にとって、最初に突破しなければならない大きな壁です。
短答は「過去問をたくさん回せば受かる」と言われることがあります。もちろん、過去問演習は重要です。しかし、ただ過去問を解くだけでは、点数が伸びきらないことがあります。
特に直前期は、残された時間が限られています。何を優先し、どの知識を本番で使える状態にするのかを明確にしておかなければ、勉強量のわりに得点につながらないまま本番を迎えてしまいます。
短答は努力の側面が強い試験です。しかし、短答にも方法論があります。がむしゃらに問題を解くだけではなく、受かるために何が必要で、そのために今どの勉強をすべきなのかを考える必要があります。
ここでは、予備試験短答式試験の構造を確認したうえで、直前期に法律科目で点数を伸ばすための勉強法を整理します。
予備試験短答式試験は、満点270点の試験です。
内訳は、法律科目が7科目で各30点、合計210点。そこに一般教養60点が加わります。
単純に6割を合格ラインの目安として考えると、270点の6割は162点です。法律科目と一般教養をそれぞれ6割ずつ取るなら、法律科目126点、一般教養36点という計算になります。
しかし、一般教養で36点を安定して取るのは簡単ではありません。一般教養は、英語、自然科学、統計、歴史など幅広い分野から出題され、事前知識なしで対応するのが難しい問題も少なくありません。
そのため、現実的には、法律科目で140点から160点を狙う戦略が必要になります。一般教養は得点が読みにくいため、9点から30点程度の幅で考え、法律科目でしっかり点数を積み上げておくことが重要です。
特に、「一般教養で落ちた」と言えるのは、法律科目で150点以上取れている場合です。法律科目が150点に届いていないのであれば、まずは法律科目の得点力を上げることを優先すべきです。
直前期に一般教養へ大きく時間を割くよりも、法律科目の点数を1点でも上げることに注力する。これが、予備短答を突破するうえで現実的な戦略です。
予備試験短答式試験は、決して簡単な試験ではありません。
令和7年予備試験短答式試験では、受験者数12,432人に対して合格者数は2,744人、合格率は22%、合格点は159点以上でした。
令和6年予備試験短答式試験でも、受験者数12,469人に対して合格者数は2,724人、合格率は22%、合格点は165点以上でした。
つまり、予備短答は、少なくとも上位2割強に入る必要がある試験です。短答を突破できなければ、論文式試験を受けることもできません。
だからこそ、短答式試験を「努力量だけで何とかする試験」と考えるのは危険です。努力は必要です。しかし、短答にも方法論があります。
がむしゃらに過去問を解くだけではなく、何を覚え、どの知識を本番で使える状態にするのかを考える必要があります。
短答対策を始めた当初は、2月から短答に全振りする形で学習を進めていました。当時は5月が短答式試験だったため、ほぼ全科目の短答過去問を初見で進めていく状態でした。
もっとも、1周目には非常に時間がかかりました。3月下旬から4月上旬にかけてようやく全科目の1周目が終わり、4月中旬には2周目に入っていましたが、最初に解いた科目の知識はほとんど残っていない状態でした。
これは、多くの受験生が経験することです。1回解いた問題を、時間が空いてからもう一度見ても、知識は思ったほど残っていません。むしろ、「見たことはあるけれど、正確には分からない」という中途半端な状態になり、選択肢を逆に選んでしまうこともあります。
ここで重要なのは、1回目に見た知識へ、できるだけ早く戻ってくることです。1周目から2周目までの期間が空きすぎると、知識は定着しません。1周目から2周目に戻るまでの目安としては、できれば1か月程度で戻ってきたいところです。
実際、4月中旬の学内短答テストでは、憲法で0点を取ったこともありました。その後、4月下旬に辰巳の短答模試を受け、法律科目で130点まで伸びました。
ただし、目標としていた法律160点には、まだ30点ほど足りませんでした。
ここで転機になったのが、模試の復習です。間違えた問題を見直すと、知らない知識ばかりではありませんでした。むしろ、条文にそのまま書いてある知識を落としていることが多かったのです。
そこで、過去問を解き続けるだけでは足りないと気づきました。短答は、条文知識を頭に定着させる試験でもあります。
直前の2週間ほどは、過去問を解くだけではなく、条文知識を中心としたインプットに大きく切り替えました。その結果、本番では法律科目164点、一般教養24点を取ることができました。
本番の法律科目の得点は、合計164点でした。
科目別では、憲法22点、行政法23点、民法22点、商法23点、民事訴訟法24点、刑法24点、刑事訴訟法26点です。一般教養は24点でした。
この得点を見ると、法律科目で大きく崩れている科目がありません。各科目で20点を切らず、得点源にできる科目では25点前後を狙えている状態です。
予備短答では、一般教養の得点が読みにくい以上、法律科目で安定して点数を取る必要があります。特に、一般教養に過度に期待せず、法律科目だけで合格点に届く水準を目指すことが、短答突破の安定につながります。
予備短答合格のためには、法律科目で最低でも140点は必要です。
法律科目は7科目、各30点です。140点を取るには、1科目平均20点が必要になります。したがって、まず意識すべきなのは、1科目20点を切らないことです。
ただし、本番では得意科目でも下振れします。140点を目標にしてしまうと、少し崩れただけで合格点に届かなくなる可能性があります。
そこで重要なのが、満点を狙う科目を複数作ることです。もちろん、本番で実際に30点を取るという意味ではありません。満点を狙う意識で勉強し、その科目で25点前後を取れる状態を作るということです。
満点科目としておすすめしやすいのは、民法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法です。
民法は範囲こそ広いものの、条文・論文知識・判例知識を中心とした出題で、安定すると大きく崩れにくい科目です。
民事訴訟法は、条文知識を中心とした出題が多く、かつ条文数が比較的少ないため、短答対策として得点源にしやすい科目です。
刑法は、法律7科目の中でも短答と論文の親和性が高く、論文知識で解ける問題も多い科目です。
刑事訴訟法も、民事訴訟法と同じく条文知識を中心とした出題が多く、条文数も比較的少ないため、得点源にしやすい科目です。
ここで大切なのは、単に「この科目をやる」と決めることではありません。1科目20点を切らないために何をすべきか、満点科目で25点前後を取るために何を覚えるべきかを逆算することです。
短答でも論文でも、勉強は「やること」自体が目的になってはいけません。パーフェクトを1周すること、問題集を回すこと、答案を書くことが目的ではありません。受かるために必要な能力を身につけることが目的です。
短答対策で陥りがちな勘違いは、「過去問をたくさん周回すれば受かる」というものです。
「ひたすら過去問をやれば受かる」「過去問を何周もすれば受かる」「短答は量だから、落ちるのは努力量が足りないからだ」と考えてしまう受験生は少なくありません。
たしかに、合格者の中には「過去問を何周もした」と話す人がいます。しかし、それは単に過去問を解いた回数だけで合格したという意味ではありません。
合格者は、過去問を解きながら、どの知識が問われるのか、どの条文が重要なのか、どの知識を暗記しなければならないのかを無意識に整理しています。
つまり、過去問演習の中で、短答知識のインプットと暗記を同時に行っているのです。
過去問を解いて、正誤だけ確認して、次の問題に進む。これを繰り返しても、点数は安定しません。短答は合格率20%程度の試験であり、得点率としても6割以上が必要です。
特に注意したいのは、過去問で問われた内容だけに対応できる状態で、本番に向かってしまうことです。過去問では取れるのに、角度を変えて問われると分からない。この状態では、本番で得点が安定しません。
だからこそ、目的意識を持って短答に取り組む必要があります。大前提として、短答知識も暗記の時間が必要です。
短答合格を目指すうえでは、過去問の周回にも段階があります。
1周目の目的は、問題を解くことそのものではありません。どの知識が、どのように問われるのかを知ることです。
1周目では、「解く」というより、問題文を「読む」感覚に近くなります。出題分野、出題知識、出題の方向性を把握し、今後どのように知識を習得すればよいのか、ゴールを確認する段階です。
2周目では、間違えた問題や知らなかった問題を中心に、実際に頭を使って解きます。この段階では、理由付けまで分かっている問題と、そうでない問題を分類することが重要です。
ただし、多くの受験生は、この2周目の作業を繰り返して終わってしまいます。これでは、知識が定着しきらないまま本番を迎える危険があります。
本当に重要なのは、3周目以降です。
3周目以降は、短答知識のインプットと、間違えた問題を解くアウトプットを繰り返します。ここで初めて、点数が大きく伸びる土台ができます。
1周目、2周目はあくまで土台作りです。なるべく早く3周目以降のフェーズに入り、条文知識を中心としたインプットを繰り返すことが重要です。
2周目で重要なのは、記憶のフックを作ることです。
短答知識は、単に理由付けを聞いただけでは定着しません。自分なりの覚え方で構いません。なぜその結論になるのか、どこで引っかけられるのか、どの言葉を見たらその知識を思い出せるのかを意識しておく必要があります。
完璧な理解にこだわりすぎる必要はありません。短答では、理由付けが詳しく問われるわけではなく、正確な知識を選択肢の中で使えるかが問われます。
そのため、2周目では、この知識を本番で思い出すためのフックを作ることを意識します。
3周目以降で中心になるのは、まとめ教材の周回と条文素読です。
ここでいう条文素読は、条文を丸暗記する作業ではありません。条文を使って短答知識を覚える作業です。
過去問を解いているからこそ、どの条文が問われやすいのか、どの分野が重要なのかが見えてきます。その状態で条文を読むと、何を覚えるべきかが分かります。
何も分からないまま条文を読んでも、重要でない部分まで覚えようとしてしまいます。しかし、過去問を通じて出題傾向を知ったうえで条文を読むと、短答で問われる知識を効率よく拾えるようになります。
直前期は、過去問を解き続けるだけでなく、条文知識を頭に入れる時間を必ず確保してください。
短答の点数は、右肩上がりに少しずつ伸びるとは限りません。
特に、条文知識のインプットの重要性に気づき、そこから集中的に取り組むと、点数が一気に伸びることがあります。
試験1か月前に法律130点だった状態から、インプット作業の重要性に気づき、本番では法律164点まで伸びた例があります。
短答は、今伸び悩んでいても、正しい方向でインプット作業をやり込めば、直前期でも急激に伸びる可能性があります。
本番では、多くの問題が2択になります。そのときに、少しでも正解の可能性が高い選択肢を選べるかどうかは、最後のインプット量に左右されます。
予備試験短答式試験は難しい試験です。高い壁に挑んでいることを誇りに思い、決して自分を卑下しないでください。
残りわずかな直前期でも、やるべきことを間違えなければ、点数はまだ伸びます。過去問を解くだけで終わらせず、条文知識を中心としたインプットを徹底し、本番で1点でも多く取り切る準備を進めていきましょう。
2026年6月19日 剛力大
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