令和7年司法試験の短答式試験では、憲法の統治分野で足切りとなる受験生が例年以上に多く見られました。
「人権はある程度できたのに、統治で崩れてしまった」──そんな声も少なくありません。
今回出題された第11問から第15問を振り返ると、多くの論点が吉野勲講師の王道基礎講座(予備・司法試験合格道場)で扱われていたテーマと重なっていました。
体系的に学んでいた受講生は、統治を苦手とする受験生がつまずいたポイントでも安定して得点できていた可能性が高いのです。
本記事では、吉野勲講師の解説を元に、第11問〜第15問のポイントを整理します。
統治対策に不安を抱えている方は、ぜひご覧ください。
国民主権は「権力の正当性の根拠が国民にある」という原理。国民から圧倒的な信頼を得ていれば、権限を集中させる独裁制も理屈の上では可能になる。
講義では、大統領制と議院内閣制を比較し、大統領は国民が直接選ぶため「正当性が強く権限も大きい」、一方首相は議員から選ばれるだけなので正当性は相対的に弱い、という具体例を示している。こうした説明を知っていれば、この肢が「批判関係にならない」と分かる。
ここは吉野講師が「王道基礎講座の受講生なら絶対に解けた」と強調した部分。
ナシオン主権=観念的・抽象的に想定される全国民を基盤とする立場。代表は「観念的国民」の代表だから、現実の有権者の指示に拘束されない → 間接民主制を正当化。
プープル主権=国民=現実の有権者。選挙人そのものが主権者なので命令委任を肯定し、直接民主制を志向。
講義では、フランス憲法(1791年と1793年)を例に「ナシオン主権とプープル主権の違い」を解説。代表制の基礎論として必ず触れる部分で、ここを理解していれば「両者は対立=批判関係」だと瞬時に判断できる。
憲法改正には限界がある。国民主権・平和主義・基本的人権は変えられない。限界を超えた転換を説明するために出てきたのが「8月革命説」。
Bの記述はAの説明を補足するもので批判関係にはならない → 2。
憲法8条は、皇室と民間が財産授受を通じて特別な関係を持つことを防ぐ趣旨。外交儀礼での贈答は趣旨に反しないため、都度の国会議決は不要。
皇室の費用は三種類(内廷費・宮廷費・皇族費)。内廷費は「お手元金」と呼ばれ、公金扱いされない。よって「天皇に私有財産が一切認められない」とするのは誤り。
憲法88条の「議決」は「予算の議決」を意味する。予算は衆議院の先議事項なので、参議院が先に審議することはできない。
一方、憲法8条の「国会の議」は通常の議決。
講義では「8条=通常の議決、88条=予算」と区別して説明しており、受講生はそのままの理解で正解にたどり着けた。
憲法51条免責特権=民事・刑事責任の免除。政党による除名処分は違憲ではない。
政党助成法が「党首の定期選挙」まで条件づけているかは、解釈が分かれる。講師は「どちらとも取れる。ここで悩んでも仕方ない。ア・ウが○と分かれば十分」とコメント。
共産党袴田事件に従えば、政党処分が一般市民としての権利を侵害する場合は適正手続の対象。ここは○。
常会は1月召集・150日・延長は両院一致で1回。特別会・臨時会は延長2回。緊急集会は延長概念なし。
講義ではこの「会期の基本セット」を体系的に押さえており、受講生なら確実に正解できる。
憲法53条は「いずれかの議院の4分の1以上の要求があれば、内閣は召集を決定しなければならない」。したがって「義務を負わない」という記述は誤り。
衆院解散→参院閉会→必要なら緊急集会を開く、という制度設計は正しい。だが「実際に開かれたことはない」は誤り。講義では「過去に開催例あり」と触れられている。
自律解散を認めると、多数派が有利なタイミングで少数派の地位を奪うことになる。憲法に明文規定もない。批判は妥当。
憲法7条3号解散。
一方の立場は「国事行為は形式的にすぎないのに、それを根拠にするのはおかしい」という批判。
もう一方は「7条列挙の国事行為には政治性の強いものも含まれている。解散もその一つと理解できる」という考え方。
講義ではこの二見解を紹介しており、受講生なら「批判がある=イは○」と判断できる。
「裁判所の権限の外」としながら「違憲審査の対象」とするのは日本語として矛盾。→ ×。
令和7年の統治分野は、多くの受験生が点を落としました。
しかし、実際に出題された問題を見返すと、王道基礎講座で扱った内容と重なるものが目立ちます。
第11問イ(ナシオン/プープル主権の対立)
第12問ウ(8条と88条の区別・衆院先議)
第14問ア(会期の基本セット)
第15問イ(7条3号解散の二見解)
いずれも講義で体系的に扱われていた部分であり、「王道の型」を知っていれば統治で崩れることはありませんでした。
統治は受験生も指導者も軽視しがちな分野です。だからこそ、正しい型で体系的に学べば、周囲と大きな差がつきます。
短答の安定はもちろん、論文での憲法理解にも直結します。
令和7年試験で統治に不安を感じた方は、次は「王道」で体系的に学ぶことを強くおすすめします。
不安を残したまま試験に臨むのか、安心して合格点を積み上げられるのか──その分かれ目になります。
詳細は【シン・王道シリーズ/予備・司法試験合格道場】をご確認ください。↓
2025年8月30日 吉野勲
役に立った:2