大学3年の春、医学部の授業で「医療訴訟」について学んだとき、私は強い違和感を覚えました。裁判官の判断と、現場で患者と向き合う医療従事者の感覚との間に、大きなズレがあると感じたのです。「医療現場を知らない人間が、本当に制度を動かしていいのだろうか?」そんな疑問が、心の中に芽生えました。
その経験がきっかけとなり、「法の力で医療現場を変えたい」という思いが自分の中で明確になりました。医師としての専門性に加え、法律の知見を身につけることで、現場と制度のギャップを埋めたい。そう考え、私はダブルライセンスの取得を決意しました。
最初に手を付けたのは、価格帯が手頃な某オンライン予備校の基礎講座でした。しかし、講師の説明は淡白で、内容に魅力を感じられず、2〜3ヶ月ほどで受講をやめてしまいました。今振り返れば、最初の教材こそ、わかりやすく、面白く、かつ丁寧に解説してくれる講師を選ぶべきだったと感じています。その後は独学に切り替え、某予備校の市販テキストや短文事例問題に1年間ほど取り組み、法律の基礎固めを進めていきました。
学習を始めた最初の1年は、独学で進めていましたが、その中で特に難しさを感じたのが「行政法」と「会社法・商法」でした。
行政法については、短文事例問題や判例を何とか読み込もうと努力していましたが、予備試験レベルの問題になると歯が立たなくなりました。判例を知っていることが前提で、さらにそれをどう活かして答案に落とし込むかが求められる。しかし、自分の中に「書く型」がまったくなく、何を書けばいいのか、どう書き始めればいいのかさえ分からない──これが最大のつまずきでした。
一方、会社法は、シンプルに「量が多すぎる」「抽象度が高すぎる」ことが原因でした。どこをどう理解すればよいのかが見えず、読んでも読んでも霧の中をさまよっているような感覚で、どれだけ時間をかけても手応えがなく、「これは独学では限界かもしれない」と思ったのが正直なところでした。
講義と並行して、大学3年の1月から大学4年の5月までの期間、市販の短答用テキストとあわせて学習を継続。インプットを深めつつ、アウトプットとして「短答過去問パーフェクト」を繰り返し解くことで、知識の定着を図りました。
その結果、大学4年5月、初めて受験した予備試験の短答式試験に合格。4S条解講座と出会い、学習スタイルを転換したことが、大きな転機となりました。
短答式試験に合格した後、論文式試験に向けての学習を本格化させました。ちょうどその頃、期間限定で中村先生の「論文解法パターン講義(7科目セット)」が販売されていたため、購入して受講を開始しました。
この講義は、初学者から中級者レベルへのステップアップに非常に適しており、自分にとってまさに必要な内容でした。それまでは、答案例を読んで暗記することを中心に据えた学習スタイルでしたが、講義を通じて条文の使い方、当てはめの評価の仕方、さらに科目ごとの「パターン別の解き方」が体系的に理解できるようになりました。
並行して、市販の短文事例問題にも取り組み医学部の授業との両立を図りました。中村先生の講義に出会ったことは、自分にとって司法試験への挑戦を本気で考える転機となりました。それまで独学で終わりの見えない学習に不安を感じていた中で、ようやく「この道を進んでいけるかもしれない」と思えるようになりました。
ちょうどその頃、医学部4年目の大きな節目であるCBT(臨床実習前の共用試験)が控えており、半年間は予備試験の勉強を中断して医学の学習に集中しました。
その後、翌年の2月頃から予備試験の論文対策を再開。某予備校の論文講義とインプット講義を受講しました。教材を5〜6回ほど繰り返して学習することで知識を強化していきました。繰り返す中で、出題者が本当に問いたいポイントが見えるようになり、問題を解く際の見通しも格段に良くなりました。
そして迎えた予備試験の論文式試験。前年の悔しさを糧に積み上げた学習の成果が実り、ついに合格することができました。
予備試験に合格した後、司法試験に向けた学習へと舵を切りました。予備試験では、問われる論点は1〜2個と絞られており、規範の提示とそれなりの当てはめができれば、一定の得点が得られる構成です。しかし司法試験では、より高度な水準が求められ、特に「当てはめの評価の仕方」で明確に差がつく試験だと感じました。
私自身、インプット中心の学習を続けており、他の受験生と比べても起案の量が圧倒的に少なかったと思います。そのため、「答案を書く」ということの重要性を、当時は軽視していたかもしれません。
そして大学6年のとき、初めての司法試験を受験。結果は無事に合格でした。自分が信じた教材を繰り返し学び続けたことこそが、合格につながった最大の要因だったと感じています。
冒頭でお話したように、「医療現場と医療制度の乖離を是正していきたい」という目標があります。そのためには、まず医療現場を知り、制度との乖離を繋いでいく架け橋になりたいと考えています。医療の現場で経験を積み、その後弁護士として活躍していきたいと思います。
科目 | 教材 |
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憲法 | 短答対策 4S論文解法パターン講義(7科目セット) 短答過去問パーフェクト 『4S条解講義』中村充(BEXA) 論文対策 『憲法ガール』大島義則(法律文化社) 『読み解く合格思考 憲法(改訂補正版)合格思考憲法』玄唯真(辰巳法律研究所) 『矢島の論文完成講座』LEC |
民法 | 短答対策 4S論文解法パターン講義(7科目セット) 短答過去問パーフェクト 『4S条解講義』中村充(BEXA) 『司法試験・予備試験 逐条テキスト 2 民法』早稲田経営出版編集部 編著 論文対策 『実戦演習民法』古積 健三郎 著 『矢島の論文完成講座』LEC |
刑法 | 短答対策 短答過去問パーフェクト 逐条テキスト 4S条解講義 『矢島の論文完成講座』LEC 論文対策 基本刑法シリーズ 大塚裕史,十河太朗,塩谷毅,豊田兼彦 著(日本評論社) 『実戦演習刑法』関根徹 著(弘文堂) 『矢島の論文完成講座』LEC |
行政法 | 短答対策 短答過去問パーフェクト 逐条テキスト 4S条解講義 『矢島の論文完成講座』LEC 論文対策 『実戦演習行政法』土田伸也 著(弘文堂) 『矢島の論文完成講座』LEC |
商法・会社法 | 短答対策 短答過去問パーフェクト 逐条テキスト 4S条解講義 『矢島の論文完成講座』LEC 論文対策 『論文演習会社法 上巻 第2版(紙版)』上田純子,松嶋隆弘,大久保拓也 編 『矢島の論文完成講座』LEC |
民事訴訟法 | 短答対策 短答過去問パーフェクト 逐条テキスト 4S条解講義 『矢島の論文完成講座』LEC 論文対策 『実戦演習民事訴訟法』小林学 著(弘文堂) 『矢島の論文完成講座』LEC |
刑事訴訟法 | 短答対策 短答過去問パーフェクト 逐条テキスト 4S条解講義 『矢島の論文完成講座』LEC 論文対策 『基本刑事訴訟法1――手続理解編』吉開多一,緑大輔,設楽あづさ,國井恒志著(日本評論社) 『事例演習刑事訴訟法』古江頼隆 (前同志社大学教授)/著(有斐閣) 『矢島の論文完成講座』LEC |
2025年5月26日 BEXA事務局
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