○目次
・4S答案を見てみよう!
・法的三段論法になってない!?
・条文が大前提なのが法的三段論法の基本
・あなたは大丈夫?論証を暗記するだけでは点数が獲れない
・条文+問題文を意識するための訓練法
・法的思考なんていらないじゃん
平成23年予備試験刑法の答案例抜粋
この答案例は青下線が条文(の文言)、赤下線が問題文の事実の書き写しです。その割合実に9割!
つまり、4S基礎講座の答案例は、条文の文言に問題文の事実を直接あてはめる部分がほとんどなのです!
なんて思われた方もいるのではないでしょうか?実はそんなことはないんです。
受験生の中には、法的三段論法とは「法解釈⇒あてはめ⇒結論」や「問題提起⇒規範(法解釈)⇒あてはめ」等と勘違いしている人がいらっしゃいます。
ですが、実は法的三段論法とは
大前提=ルール(法律要件→法律効果)はこうなっている!
↓ そして
小前提=法律要件にあてはまる事実はこれだ!
↓ よって
結論=本件で法律効果が発生する!
という論法を指すのであり、大前提=ルールには当然、法律の条文自体も含まれているのです。
法解釈や、その結果である規範を必ず提示しなければならないわけではなく、むしろ原則は条文そのものを提示すれば足り、その条文の解釈が必要になったときに初めて例外的に法解釈・規範が出てくるのです。
重要なことなのでもう一度言いますが、原則は条文そのものなのです。
また、小前提=事実は、問題文の書き写しで充分に対応できるので、上記のような答案になるわけです。
中村充先生の発想は、「大前提と小前提は自分の言葉で書かなくてもいい、条文と問題文の書き写しだけで法的三段論法の答案を書くことができる!」というものなのです。
実は、『憲法ガール』(法律文化社)で有名な大島先生も、法学セミナー2021年5月号P13で、法的三段論法について記事を書いています。
気になる人はオンラインショップや本屋さんで確認してください。
今のあなたが、「法的三段論法にするには、法解釈や、条文とは別の“規範定立”をしなければならない」と勘違いしているのであれば、条文(の文言)そのものもルール=大前提にあたるという発想の転換をしてください。
法解釈・規範定立をする必要がない場合がむしろ大半なのであり、条文(の文言)そのものに問題文の事実をあてはめて結論を出す形こそが原則だと考えるべきなのです。
・「条文(の文言)⇒法解釈・規範定立⇒あてはめ⇒結論」は、例外的
・「条文(の文言)⇒あてはめ⇒結論」が、大多数
規範・解釈を覚えることに集中しがちな人は、まずその発想をあらためるべきなのです。
それでも、やはり法解釈・規範定立が必須だと考える人もいるでしょう。
これまで長時間学んできた法解釈・規範定立が、司法試験合格にはそこまで重要なものではないとは思いたくない気持ちは分かります。
また、「法律家」になる以上、「法」解釈・規範定立こそがアイデンティティだと考えたくなる気持ちも分かります。
しかし、何よりもまず、条文(の文言)自体こそが「法律」ですよね。
あなたは、どの条文(の文言)にも、問題文の事実を適切にあてはめることができていますか?
これができないようでは、問題文より複雑な事件を扱う「法律家」として最低限の仕事もできませんから、司法試験に合格させるわけにはいかない…と判定されても仕方ないのではないでしょうか。
旧司法試験の平成前半くらいまでは、論文式試験でも問題文が短く、その事実を条文(の文言)自体にあてはめるだけでは試験時間・答案用紙が余ってしまいました。
だからこそ、法解釈・規範定立が求められていることが分かり、受験生は法解釈・規範定立をまとめた『論証集』を大量に勉強する必要があったのです。
しかし、今の予備試験・司法試験では、問題文の事実の量が大幅に増えました。その採点実感・出題趣旨でくり返し「問題文の事実を使ってほしかったのに…」という旨が書かれていることからも、問題文の事実に大きく点数が振られていることは間違いないでしょう。
ぜひ一度、実際に時間を計って、大きく点数が振られている問題文の事実をフル活用した答案を書いてみてください。法解釈論を書いている(時間的・紙面的)余裕などほとんどないことが分かりますから。
そのため、大前提はあくまで条文(の文言)自体であると考え、そこに小前提=問題文の事実をあてはめることで、合格点を獲ることができるのです。
原則は、条文の文言に問題文を事実を直接あてはめる。
例外的に、条文の文言に事実があてはまるかどうか不明確といった場合にだけ、条文(の文言)を解釈をする必要が初めて出てくる。
つまり、法解釈・規範定立(をまとめた論証)は、優先順位が落ちるのです。
意外に忘れがちなのが、予備試験・司法試験の論文式試験の答案は、「あれを書いた、これを書いた」以上に、全体を総合して評価されることです。
論点を1つや2つ落としても、答案全体を総合的に評価されれば合格点が付きます。「○○は書いてない」「論点をたくさん落とした」等と言っていない合格者なんて、見たことがありますか?
逆に、論点を多く拾っているのに合格できないのは、往々にして答案全体の評価が低いということなのでしょう。
したがって、「この論点を覚えた・理解した」「あの論証・規範を覚えた・理解した」ではなく、答案全体を通して自分の答案が予備試験・司法試験で評価されるものなのか、という観点が重要です。
具体的には、以下の点を意識しましょう。
<予備試験・司法試験で評価されにくい答案の特徴>
○内容面
・問われていないことを書いてしまう答案
・条文(大前提)の摘示が(少)ない答案
・法律論に偏る等で問題文の事実(小前提)を使えてない答案
・処理手順が混乱している答案
○形式面
・読みづらい答案
・配点割合に沿っていなさそうな、アンバランスな答案
<予備試験・司法試験で評価されやすい答案の特徴>
○内容面
・問われていることに答えている答案
・条文(大前提)の摘示を必ずしている答案
・問題文の事実(小前提)を使っている答案
・処理手順に則っている答案
○形式面
・読みやすい答案
・バランス良く書けている答案
あなたの答案は、<予備試験・司法試験で評価されにくい答案>になっていませんか?<予備試験・司法試験で評価されやすい答案の特徴>のうち「条文(大前提)の摘示」と「問題文の事実(小前提)を使っている」だけでも、評価が全く異なってきます。
そこで、条文と問題文を意識するための訓練法のヒントをご紹介します。
○知識面:条文(の使い方)を押さえろ/論証はいったん休め(実はそんな使わないよ)
まず知識面として、条文とその使い方を押さえる必要があります。短答・論文式問題を解きながら押さえるのがよいでしょう(論文式問題は、答案構成まででも足りるはずです)。
そして、条文と問題文を意識するモードへと転換するために、暗記した論証は、一旦忘れちゃうくらいの方がいいかもしれません。
○答案面:問題文の事実の書き写しの訓練をしろ
中村充先生のブログに掲載されている「箇条書き答案(構成)」を書くことから始めましょう。選択した条文の各文言に直接、あてはめやすい問題文の事実を1~2個ずつあてはめて終わりという感じです。
例えば、取消訴訟の訴訟要件パターンの問題では、
・(行ソ3Ⅱ):○ ∵①(問題文の事実を1つ書写)、②(同左)
・(9):○ ∵(同上)
・(9Ⅰかっこ):○ ∵(同上)
という形です。
この「箇条書き答案(構成)」が、予備試験・司法試験で評価されやすい答案の第一歩となります。
○参考
中村充ブログ:勝利のアルゴリズム『最低ライン確保→加点積み上げ』
↑のブログの「1.最低ライン確保」
その上で、
・思いついたら、問題文の事実が条文の文言にあてはまる理由(≒評価)
・問題文の事実が条文の文言にあてはまるか不明な場合など、必要な限度で法解釈(なお、条文の趣旨を想起するのではなく、ゼロから想像することから組み立てる訓練をすると、現場思考力が鍛えられます)
を、リスク・リターンを衡量しつつ、書き加えていきましょう。
なお、
“そもそもどの条文を選択すべきか分からない”
“問題文のどの事情を書き写せばいいのか分からない”
“選択した条文のどの文言からあてはめていけばいいのか分からない”
“箇条書きの間をつなぐ言葉を自分で作り出すことができない”
という方には、4Sメソッドがオススメです。
○4Sの知識面:条文選択を処理手順中に組み込んでいる。条文選択の処理手順を確立(+短答過去問等で条文とのホットラインを増やしていく)
4S基礎講座では、必ずと言っていいほど条文からスタートします。4Sメソッドの処理手順の中に条文選択のフローが組み込まれているので、自然と条文の意識が培われ、受講が終わる頃には当然のように条文を探す癖が身に付きます。
○4Sの答案面:4Sを各科目で具体化した解法パターンに沿って書いていくだけ。
4S基礎講座の答案例は冒頭で提示した通り、問題文をふんだんに使ったものになります。4Sメソッドを具体化した各科目の解法パターンをベースに答案を作っていけば、自然と問題文の事実を使うことが可能になります。
解法パターンに沿って、手元にある条文の文言単位で手元にある問題文を書き写すことになるので、自分で考える必要は(あまり)ありません。
ここまで読んで、じゃあ法的思考・法的知識なんていらないじゃんと思う方もいらっしゃるかもしれません。
実はそうじゃありません。法的思考は実は答案に表れないのです。
問題文を読み始めて、
・問題文のどこに着目し、
・どの条文を選択して、
・その条文の文言に問題文の事実があてはまりそうか
・その条文の文言にどのような順序でどのようにあてはめていこうか
等、答案を書き始めるまでのプロセスで法的思考を使い、それに基づいて答案を作成していくのです。
つまり法的思考とは、問題文から答案を作り上げるための橋渡しになる答案構成段階で働かせるものなのです(問題文⇒法的思考による答案構成⇒答案)。
ところが、この法的思考プロセスをすっ飛ばして、いきなり答案の、しかも法解釈や規範定立というわずかな例外的部分に偏って解説される講義・講座ばかり…
中村充先生の『4S基礎講座』は、まさにこの法的思考プロセスを「4S」という処理手順を使って訓練するための講座です。
・4Sは法的思考を訓練できる!
・法的思考の訓練の中で法的知識も自然と身に着けることができる!
・合格に必要な約7割の法的知識を論文解法の訓練の中でカバーしている!
・法的思考だけじゃなく、その後の答案例までカウンセリングでカバーできる!
規範・論証を覚えることがつらいという方、もっと問題文の事実を使って答案が書きたいという方は是非ご検討ください!
2021年7月19日 中村充
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