民法の規定によれば、①詐欺による意思表示は取り消すことができるとされている(第96条第1項)のに対し、法律行為の要素に錯誤がある意思表示は無効とするとされており(第95条本文)、②第三者がその詐欺を行った場合においては相手方がその事実を知っていたときに限り意思表示を取り消すことができるとされている(第96条第2項)のに対し、要素の錯誤による意思表示の無効の場合には同様の規定がないし、③詐欺による意思表示の取消は善意の第三者に対抗する事ができないとされている(第96条第3項)のに対し、要素の錯誤による意思表示の無効の場合は同様の規定がない。
「詐欺による意思表示」と「要素の錯誤のある意思表示」との右のような規定上の違いは、どのような考え方に基づいて生じたものと解することができるかを説明せよ。その上で、そのような考え方を採った場合に生じ得る解釈論上の問題点(例えば、動機の錯誤、二重効、主張者)について論ぜよ。