甲は,A土地の所有者乙を被告と表示して,所有権移転登記を求める訴えを提起した。なお,この訴訟には,訴訟代理人はいないものとする。
1 甲と通じた丙は,乙と称して訴状等を受領して,第1回口頭弁論期日に出頭し,請求原因事実をすべて自白した。
(1) 丙が自白した後,第1回口頭弁論期日において,出頭したのは乙ではなく,丙であることが判明した。この場合,裁判所は,どのような措置を採るべきか。
(2) 第1回口頭弁論期日において弁論が終結し,乙に対する請求認容の判決が言い渡されて,控訴期間が徒過した。その後,甲は,A土地について所有権移転登記を経由した。この場合,乙は,訴訟法上どのような手段を採ることができるか。
2 乙が訴状等を受領したが,甲と通じた丙が,「口頭弁論期日には出頭しなくてもよい」と乙をだました上,自ら乙と称して,第1回口頭弁論期日に出頭し,請求原因事実をすべて自白した。同期日の後,乙は死亡したが,裁判所が乙の死亡を知らなかったため,乙に対する請求認容の判決が言い渡されて,控訴期間が徒過した。この場合,乙の相続人丁は,訴訟法上どのような手段を採ることができるか。
当事者の確定をめぐる手続上の諸問題に対する解決能力を試す問題である。1(1)では,当事者の確定,訴訟係属の有無に触れた上で裁判所の措置を論ずべきである。1(2)では,(1)での立場を前提として,判決まで至った場合のその効力とこれに対する救済手段を論ずべきである。2では,1との違いを踏まえ,訴訟係属の有無,手続の中断の効果とこれに違反した場合の判決の効力を論じ,これに対する救済手段を論ずべきである。