平成15年旧司法試験民法第2問

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物権変動 - 不動産物権変動
債権の効力 - 債権不履行に基づく損害賠償
売買 - 売買の効力

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 Aは,Bから登記簿上330平方メートルと記載されている本件土地を借り受け,本件土地上に自ら本件建物を建てて保存登記を行い,居住していた。Aは,本件建物を改築しようと考え,市の建築課と相談し,敷地面積が330平方メートルならば希望する建物が建築可能と言われたため,本件土地を売ってくれるようBに申し込み,Bは,これを承諾した。売買契約では,3.3平方メートル当たり25万円として代金額を2500万円と決め,Aは,代金全額を支払った。

 以上の事案について,次の問いに答えよ(なお,各問いは,独立した問いである。)。

1 本件土地の売買契約締結直後に,本件土地建物を時価より1000万円高い価格で買い受けたいというCの申込みがあったため,Aは,Cとの間で本件土地建物の売買契約を締結した。しかし,専門業者の実測の結果,本件土地の面積が実際には297平方メートルであることが判明し,面積不足のためにCの希望していた大きさの建物への建て替えが不可能であることが分かり,AC間の売買契約は解除された。Aは,Bに対してどのような請求ができるか。

2 数年後,Bは,Aへの移転登記が未了であることを奇貨として,本件土地をDに売却しようと,「Aはかつて賃借人だったが,賃料を支払わないため契約を解除した。」と虚偽の事実を告げた。Dは,事情を確かめにA方に出向いたが,全く話をしてもらえなかったため,Bの言い分が真実らしいと判断し,本件土地を買い受け,移転登記をした。

 AD間の法律関係について論ぜよ。

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 本問は,数量不足の担保責任と二重譲渡に関する問題である。小問1は,数量指示売買の定義と本件への当てはめ,契約解除の可否,代金減額請求による不当利得返還請求,責任の性質と損害賠償の範囲など,基礎的知識を事案に即して展開する能力を問う問題である。小問2は,背信的悪意者排除を含めて,対抗要件による問題処理の基本構造を正確に理解しているかをみた上で,所有権の取得を対抗できない賃借人を保護する必要性と方法を考えさせるものである。