平成17年旧司法試験刑法第2問

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財産に対する罪 - 詐欺罪
国家の作用に対する罪 - 賄賂の罪

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 A県B市内の印刷業者である甲は,知人でB市総務部長として同市の広報誌の印刷発注の職務に従事している乙に現金を渡して同市が発注する広報誌の印刷を受注したいと考えていた。そうした折,甲は,同県内の土木建設業者である知人の丙から同県発注の道路工事をなるべく多く受注するための方法について相談を受けたので,この機会に丙の金を自己のために乙に渡すことを思い付き,乙に対し,「近いうちに使いの者に80万円を届けさせます。よろしくお願いします。」と伝えたところ,乙は,甲が80万円を届けさせることの趣旨を理解した上,これを了承した。一方,甲は,丙に対し,「県の幹部職員である乙に金を渡せば,道路工事の発注に際して便宜を図ってくれるはずだ。乙に80万円を届けなさい。」と言ったところ,これを信じた丙は,使者を介して乙に現金80万円を届けた。乙は,これが甲から話のあった金だと思い,その金を受領した。

 後日,丙は,甲が丙のためではなく甲自身のために乙に80万円を届けさせたことを知るに至り,甲に対して80万円の弁償を求めた。しかし,甲は,丙に対し,「そんなことを言うなら,おまえが80万円を渡してA県の道路工事を受注しようとしたことを公表するぞ。そうすれば,県の工事を受注できなくなるぞ。」と申し向け,丙をしてその請求を断念させた。

 甲,乙及び丙の罪責を論ぜよ(ただし,特別法違反の点は除く。)。

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 本問は,公務員に賄賂を供与するに当たり,第三者を欺いてその資金を公務員に交付させ,その後,事情を知ったその第三者からの資金返還請求に対し,同人を脅して請求を断念させたという事例を素材として,賄賂罪の構成要件の基本的な理解を前提に,第三者の行為を介した贈賄罪,欺罔者以外の者への財物の交付に係る詐欺罪,不法原因給付に係る財産犯の成否等に関する理解及びその事例への当てはめの適切さを問うものである。