犯罪の積極的成立要件 -
因果関係
共犯 -
共同正犯
共犯 -
教唆犯・幇助犯
各則(個人的法益に対する罪) -
住居侵入罪
財産に対する罪 -
強盗罪
甲は,自己の取引先であるA会社の倉庫には何も保管されていないことを知っていたにもかかわらず,乙の度胸を試そうと思い,何も知らない乙に対し,「夜中に,A会社の倉庫に入って,中を探して金目の物を盗み出してこい。」と唆した。乙は,甲に唆されたとおり,深夜,その倉庫の中に侵入し,倉庫内を探したところ,A会社がたまたま当夜に限って保管していた同社所有の絵画を見付けたので,これを手に持って倉庫を出たところで警備員Bに発見された。Bが「泥棒」と叫びながら乙の身体をつかんできたので,乙は,逃げるため,Bに対し,その腹部を強く蹴り上げる暴行を加えた。ちょうど,そのとき,その場を通りかかった乙の友人丙は,その事情をすべて認識し,乙の逃走を助けようと思って,乙と意思を通じた上で,丙自身が,Bに対し,その腹部を強く殴り付け蹴り上げる暴行を加えた。乙は,その間にその絵画を持って逃走した。Bは間もなく臓器破裂に基づく出血性ショックにより死亡したが,その臓器破裂が乙と丙のいずれの暴行によって生じたかは不明であった。
甲,乙及び丙の罪責を論ぜよ(ただし,特別法違反の点は除く。)。
本問は,侵入盗を唆されて実行した者が逃走のため警備員に暴行を加えた後,他の者が意思を通じてその警備員に暴行を加えたところ,同人が死亡したが,それがいずれの暴行によるかは不明であったという事例を素材として,事案を的確に把握してこれを分析する能力を問うとともに,未遂の教唆,事後強盗罪の法的性質,承継的共同正犯の成否等に関する理解及びその事例への当てはめの適切さを問うものである。