平成20年旧司法試験商法第2問

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株式 - 株式の譲渡・株主名簿
資金調達 - 新株発行

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 甲株式会社は,その発行する株式を金融商品取引所に上場している監査役会設置会社である。甲社の発行済株式総数の約20パーセントを保有する株主名簿上の株主である乙株式会社は,平成20年4月25日,同年6月27日開催予定の甲社の定時株主総会における取締役選任に関する議案及び増配に関する議案についての株主提案権を行使した。この場合において,次の2つの問いに答えよ。なお,甲社の定款には,種類株式に係る定めはないものとする。

1 乙社は,株主提案権の行使とともに,甲社に対し,その提案の内容を他の株主によく伝えたいとして,甲社の株主名簿の閲覧請求を行った。これに対し,甲社は,乙社が甲社と事業上の競争関係にある丙株式会社の総株主の議決権の70パーセントを有していることから,乙社からの閲覧請求を拒否することとした。この閲覧請求の拒否は許されるか。

2 甲社の取締役らは,乙社からの株主提案を受けて,直ちに臨時取締役会を開催し,丁株式会社との業務提携関係を強化することが目的であるとして,既に業務提携契約を締結していた丁社のみを引受人とする募集株式の第三者割当発行を決議した。なお,払込金額については甲社株式の直近3か月の市場価格の平均の90パーセントに相当する額とし,払込期日については定時株主総会の開催日の1週間前の日とすることとされた。また,当該決議に合わせて,定時株主総会に係る議決権行使の基準日について,この発行に係る株式に限りその効力発生日の翌日とする旨の決議がされ,これに係る所要の公告も行われた。この募集株式の発行が実施されると,乙社が保有する甲社株式の甲社発行済株式総数に対する割合は約15パーセントに低下する一方で,丁社のそれは約45パーセントに上昇することとなる。乙社は,この募集株式の発行を差し止めることができるか。

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 小問1は,会社法第125条において株主名簿の閲覧請求権及びその拒否事由が規定されている趣旨についての理解を問うものであり,解答に際しては,親子会社関係が絡む場合にはどのような解釈を行うかについても論述する必要がある。小問2は,公開会社の募集株式の発行に係る規律の内容の理解を問うとともに,会社法第210条の適用関係における法令・定款違反の有無及び著しい不公正の有無について,それぞれの解釈に係る基礎的な知識及びそれを事例に適用する能力を問うものである。