平成21年旧司法試験刑法第1問

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違法性阻却事由 - 正当防衛
共犯 - 共同正犯
生命・身体に対する罪 - 暴行罪・傷害罪

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 甲及び乙は,路上を歩いていた際,日ごろから仲の悪いAと出会い,口論となったところ,立腹したAは甲及び乙に対し殴りかかった。甲は,この機会を利用してAに怪我を負わせてやろうと考えたが,その旨を秘し,乙に対し,「一緒に反撃しよう。」と言ったところ,乙は甲の真意を知らずに甲と共に反撃することを了承した。そして,甲は,Aの頭部を右拳で殴り付け,乙は,そばに落ちていた木の棒を拾い上げ,Aの頭部を殴り付けた結果,Aは路上に倒れ込んだ。この時,現場をたまたま通りかかった丙は,既にAが路上に倒れていることを認識しながら,仲間の乙に加勢するため,自ら別の木の棒を拾い上げ,乙と共にAの頭部を多数回殴打したところ,Aは脳損傷により死亡した。なお,Aの死亡の結果がだれの行為によって生じたかは,明らかではない。

 甲,乙及び丙の罪責を論ぜよ(ただし,特別法違反の点は除く。)。

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 本問は,相手方による急迫不正の侵害に対して,共同で反撃行為としての暴行を加え,更に他の者がこれに加担して暴行を加え続けたところ,相手方が死亡したが,死因がいずれの暴行によるかは不明であったという事例を素材として,これを的確に把握し,分析する能力を問うとともに,正当防衛,共同正犯と過剰防衛,承継的共同正犯等に関する理解及びその事例への当てはめの適切さを問うものである。