平成21年旧司法試験商法第1問

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株式 - 自己株式の取得
資金調達 - 新株発行
会社分割 - 吸収分割

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 製パン事業を営むX株式会社は,資本関係のない食品大手のY株式会社が保有する製パン工場の一つであるA工場をのれんも含めて取得し,これを直営したいと考えている。A工場(のれんも含む。以下同じ。)の評価額は,複数の証券アナリストに評価させたところ,5億円であった。

 X社の経営陣は,今後Y社と資本関係を持つことで,Y社からノウハウの提供等を受けることを期待することができると考え,A工場を現金ではなくX社株式50万株で取得することを希望してY社の経営陣と交渉を行ったが,最終的に,両社の経営陣は,X社がY社からA工場をX社株式60万株で取得すること(以下「本件取得」という。)に合意した。

 なお,X社は,発行可能株式総数が300万株,発行済株式総数が200万株,純資産額が20億円であり,X社株式の価値は1株当たり1000円であったものとする。また,X社は,公開会社であるが,委員会設置会社でも種類株式発行会社でもないものとする。

 本件取得を実行するには,X社の側では,どのような手続をとればよいか。次の二つの方法について,検討せよ。

1 本件取得に反対するX社の株主が,X社に対して,その有するX社株式の買取請求をすることを認める方法

2 本件取得に反対するX社の株主が,X社に対して,その有するX社株式の買取請求をすることを認めない方法

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 本問は,株式会社が他の株式会社の事業の一部を自社の株式を対価として取得する場合に取得する株式会社においていかなる手続が必要となるかを問うものである。解答に際しては,取得に反対する株主に株式買取請求を認める手法としては吸収分割が,同請求を認めない手法としては現物出資による募集に係る株式の発行・自己株式の処分が考えられることを示した上で,後者の手法においてはいわゆる有利発行に該当することも考慮しつつ,それぞれ必要となる手続について整合的な論述をすることが求められる。