平成22年旧司法試験商法第2問

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約束手形 - 手形保証

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 A株式会社は,平成16年12月20日,貸金業者であるXから,事業資金として3000万円を借り受けた。その際,A社とXとの間では,①A社は,Xに対し,毎月1パーセントの利息を支払うこと,②Xは,A社に対し,約定どおり利息の支払がされる限り,元金の返済を猶予するが,利息の支払を怠ったときは,A社は,Xに対し,直ちに元金全額を返済しなければならないこと,③貸付金の返済を確保するため,A社は,手形金額を3000万円とし,振出日と満期を白地とした約束手形(以下「本件手形」という。)を振り出すことが合意された。また,A社の代表取締役Bは,Xから,A社の取締役Yが手形の支払を保証するよう求められたため,受取人をYとする本件手形を振り出し,Yが拒絶証書の作成を免除して白地式裏書をした本件手形をXに交付した。なお,事業資金の借入れについては,A社の取締役会の決定がされていたが,本件手形の振出しについては,A社の取締役会の承認は受けていなかった。

 その後,A社は,利息を合意に従ってXに支払ってきたが,平成19年5月ごろから資金繰りが悪化してきて,同年8月以降,利息を支払うことができなくなった。

 Xは,平成22年4月9日に至り,本件手形の振出日を同月1日,満期を同年5月10日と補充して,当該満期に支払のため提示したが,支払を拒絶されたので,Yに対して手形金の支払を請求した。Yは,Xの請求を拒むことができるか。

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 本問は,利息の支払がされる限り元金の返済を猶予する旨の合意が付された貸付金の返済を確保するため,取締役会の承認なく,いわゆる隠れた手形保証のための裏書を行わせるために取締役を受取人として,かつ,振出日及び満期を白地にして株式会社が振り出した約束手形について,利息の支払が遅滞したためにされた手形金の支払請求を当該取締役が拒むことができるかどうかを問うものである。解答に際しては,株式会社が隠れた手形保証のために取締役を受取人とする約束手形を振り出すことが,会社と取締役間の取引として取締役会の承認を要するかどうか,及び振出日と満期を白地にして振り出された当該約束手形の補充権の消滅時効とその起算点をどのように考えるべきかについて,整合的な論述をすることが求められる。