平成22年旧司法試験憲法第1問

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基本的人権の保障 - 職業選択の自由

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 理容師法は,「理容師の資格を定めるとともに,理容の業務が適正に行われるように規律し,もつて公衆衛生の向上に資することを目的」(同法第1条)として制定された法律である。同法第12条第4号は,理容所(理髪店)の開設者に「都道府県が条例で定める衛生上必要な措置」を講ずるよう義務付け,同法第14条は,都道府県知事は,理容所の開設者が上記第12条の規定に違反したときには,期間を定めて理容所の閉鎖を命ずることができる旨を規定している。

 A県では,公共交通機関の拠点となる駅の周辺を中心に,簡易な設備(洗髪設備なし)で安価・迅速に散髪を行うことのできる理容所が多く開設され,そこでの利用者が増加した結果,従来から存在していた理容所の利用者が激減していた。そのような事情を背景に,上記の理容師法の目的を達成し,理容師が洗髪を必要と認めた場合や利用者が洗髪を要望した場合等に適切な施術ができるようにすることで理容業務が適正に行われるようにするとともに,理容所における一層の衛生確保により,公衆衛生の向上を図る目的で,A県は,同法第12条第4号に基づき,衛生上必要な措置として,洗髪するための給湯可能な設備を設けることを義務付ける内容の条例を制定した。このA県の条例に含まれる憲法上の問題について論ぜよ。

 なお,法律と条例の関係については論じる必要はない。

 

【参照条文】理容師法

第1条 この法律は,理容師の資格を定めるとともに,理容の業務が適正に行われるように規律し,もつて公衆衛生の向上に資することを目的とする。第1条の2 この法律で理容とは,頭髪の刈込,顔そり等の方法により,容姿を整えることをいう。

② この法律で理容師とは,理容を業とする者をいう。

③ この法律で,理容所とは,理容の業を行うために設けられた施設をいう。

第12条 理容所の開設者は,理容所につき左に掲げる措置を講じなければならない。

一 常に清潔に保つこと。

二 消毒設備を設けること。

三 採光,照明及び換気を充分にすること。

四 その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置

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 条例による理容所の規制につき,一見すると公衆衛生上の観点からの営業態様に関する規制について,その実態が競争制限的で既存業者保護となる効果を持ち,かつ,違反者に対しては理容所の閉鎖という法律上の効果を伴う点で,単なる営業態様規制ではなく,開業規制とも考え得る点を,憲法第22条第1項の職業選択の自由との関係でどのように考えることができるのかを問うことを意図したものである。